いつまで、このクルマに乗れるのだろう。
ガソリンスタンドで給油するとき。
古くなった部品の交換費用を聞いたとき。
修理に必要な部品が、すぐには手に入らないと知ったとき。
ふと、そんなことを考える瞬間があります。
マツダ RX-7(FD3S)。
13B-REWロータリーエンジンを搭載した、今なお多くのクルマ好きの心をつかんで離さないスポーツカーです。
美しいボディライン。独特のエンジンサウンド。アクセルを踏んだときの感覚。
その魅力は、単に速いとか、燃費がいいとか、便利だとか、そんな数字だけでは語りきれません。
しかし、時代は変わっています。
ガソリン価格、維持費、環境への配慮、旧車の部品供給。そして、自動車の電動化。
かつて当たり前だったガソリンエンジンのスポーツカーも、これから先ずっと同じように所有できるとは限りません。
それでも、FD3Sに乗り続けたい。
今回は、そんな時代にロータリーを所有することの現実と、それでも手放したくない理由について考えてみます。
目次
- FD3Sは、いつか乗れなくなるのか?
- ガソリン車を取り巻く時代の変化
- ロータリーを維持する現実は甘くない
- それでもFD3Sを手放したくない理由
- これからも乗り続けるためにできること
- FD3Sを所有するということ
- まとめ|好きなクルマに乗れる時間を大切に
1. FD3Sは、いつか乗れなくなるのか?
最初に考えたいのは、この疑問です。
FD3Sは、将来、公道を走れなくなるのでしょうか?
現時点で、日本国内のFD3Sが特定の年を迎えたら一律に公道走行できなくなる、という制度を前提に考える必要はありません。
ただし、今後の法制度や車両の状態、整備環境などによって、所有のしやすさが変わる可能性はあります。
ここで重要なのは、次の3つを分けて考えることです。
- 法律上、走行できるか
- 車両を正常な状態に維持できるか
- 費用や時間をかけて所有し続けられるか
この3つは、同じ問題ではありません。
法律上は走行できても、修理に必要な部品が見つからなかったり、修理費用が予算を超えたりすれば、乗り続けることは難しくなります。
反対に、年式が古いからといって、すぐに乗れなくなると決まっているわけでもありません。
FD3Sの将来を考えるとき、本当に向き合うべきなのは「何年になったら終わりなのか」という話だけではなく、これからも走れる状態をどう維持していくかという問題なのだと思います。
2. ガソリン車を取り巻く時代の変化
自動車を取り巻く環境は、確実に変わりつつあります。
2035年の電動化目標
日本政府は、2035年までに乗用車の新車販売で電動車100%を実現する目標を掲げています。
ここでいう電動車には、電気自動車(EV)だけでなく、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)も含まれます。
つまり、この目標は「2035年にガソリンを使うクルマがすべて走行禁止になる」という意味ではありません。
対象は新車販売に関する目標であり、現在所有しているFD3Sが2035年に一律で走行禁止になることを意味するものではありません。
出典:経済産業省「自動車・蓄電池産業」
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/ggs/05_jidosha.html
(参照日:2026年10月9日)
環境規制は新車だけの話なのか
排出ガス規制についても、国土交通省は新車に対する規制を段階的に強化してきました。
一方で、実際に旧車を所有する場合には、車検や保安基準への適合、排出ガスに関する検査など、車両に適用されるルールを守る必要があります。
将来の制度変更をすべて予測することはできません。
だからこそ、根拠のない「あと何年しか乗れない」という情報に振り回されず、現時点で適用される制度を確認することが大切です。
出典:国土交通省「自動車の排出ガス規制(新車)」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk10_000001.html
ガソリン価格と維持費
もうひとつ、日々の所有に直接影響するのが費用です。
ガソリン代、エンジンオイル、タイヤ、税金、車検、保険、そして修理費用。
これらの支出が重なると、FD3Sを所有し続けることは簡単ではありません。
特に、燃料費は走行距離や燃費、給油時の価格によって変わります。
例えば、月に500km走行し、実燃費を6km/Lと仮定すると、必要なガソリンは約83.3Lです。
ガソリン価格が1Lあたり180円なら、月の燃料代は約15,000円になります。
これはあくまで計算例であり、FD3Sの実燃費や現在のガソリン価格を示すものではありません。
実際の負担を把握するには、自分の給油記録を使って計算するのが確実です。
3. ロータリーを維持する現実は甘くない
FD3Sを所有するうえで、避けて通れないのが維持管理です。
新しいクルマであれば、日常的な整備だけで大きなトラブルなく使える場合もあります。
しかし、年式の古いスポーツカーでは、これまでの整備歴や保管環境、走行距離などによって、必要なメンテナンスが大きく変わります。
① 燃料費は走り方によって変わる
ロータリーエンジンを楽しむためにアクセルを踏み込めば、燃料消費も増えやすくなります。
街乗り、渋滞、高速道路、スポーツ走行では燃費が異なります。
燃料費を抑えたいなら、急加速を控える、不要なアイドリングを減らす、タイヤの空気圧を適正に保つなど、基本的なことも大切です。
ただし、燃費だけを優先してロータリー本来の楽しさを我慢し続けるのも、少し違う気がします。
自分が納得できる走行距離と費用のバランスを見つけたいところです。
② 修理費用は予測しきれない
古いクルマの維持で難しいのは、毎月の支出だけではありません。
ある月は何も問題がなくても、別の月に複数の部品交換が必要になることがあります。
ゴムホース、冷却系、電装部品、足回りなど、年数による劣化が関係する部分は少なくありません。
もちろん、すべてのFD3Sに同じ修理が必要になるわけではありません。
大切なのは、故障してから慌てるのではなく、定期点検と修理費用への備えを考えておくことです。
③ 部品があっても、すぐ直せるとは限らない
旧車では、部品そのものの入手性だけでなく、修理できるショップや技術者の存在も重要です。
部品が手に入っても、修理を依頼できる工場が見つからなければ、すぐに走れる状態へ戻せない可能性があります。
日頃からFD3Sの整備経験があるショップとつながり、整備記録を残しておくことは、長く所有するうえで大きな意味があります。
④ 放置は、維持の負担を増やすことがある
忙しくて乗る時間がない。修理費用が心配で、つい後回しにしてしまう。
そんなこともあると思います。
ただし、長期間動かさないことが、すべての車両にとって最善とは限りません。
保管環境や車両の状態に応じて、バッテリー、タイヤ、油脂類、冷却系などを適切に管理する必要があります。
具体的な保管・始動方法は、車両の整備状態や専門家の指示に合わせて判断しましょう。
4. それでもFD3Sを手放したくない理由
ここまで読むと、FD3Sを所有するのは大変なことばかりに思えるかもしれません。
確かに、維持費もかかります。故障の心配もあります。気軽に乗れるクルマとは言いにくい部分もあります。
それでも、FD3Sには数字だけでは説明できない魅力があります。
① ロータリーエンジンという特別な存在
レシプロエンジンとは異なる構造を持つロータリーエンジン。
その独特の回転フィールやサウンドは、FD3Sを語るうえで欠かせない魅力です。
効率や燃費だけを基準にすれば、別の選択肢が見つかるかもしれません。
それでも、このエンジンだから乗りたいと思う。
クルマを選ぶ理由は、必ずしも合理性だけではありません。
② 時代が変わっても色あせないデザイン
FD3Sの流れるようなボディラインは、発売から年月が経過した現在でも、多くの人を魅了しています。
派手な装備がなくても、停めてある姿を眺めたくなる。
洗車をして、ボディの状態を確認して、少し離れて全体を眺める。
そんな時間そのものが、所有する楽しみになることもあります。
③ 自分の手で維持していく楽しさ
整備記録を残す。部品を調べる。ショップに相談する。少しずつコンディションを整える。
こうした作業は、手間がかかる一方で、クルマへの理解を深めてくれます。
もちろん、すべてを自分で整備する必要はありません。
安全に関わる作業や専門的な整備はプロに任せながら、自分の愛車がどんな状態にあるのかを知っておく。
それも、長く付き合うための楽しみ方です。
④ 今しか味わえない時間がある
将来、どんなクルマが主流になっているかは、完全には予測できません。
技術が進歩しても、今所有しているFD3Sと同じ個体、同じ状態、同じ時間がそのまま戻ってくるわけではありません。
だからこそ、いつか手放す日が来るかもしれないと考えるなら、今できることを大切にしたい。
愛車を眺める。走りに出かける。写真を残す。整備記録をつける。
そんな小さな積み重ねも、クルマを所有する意味のひとつだと思います。
5. これからも乗り続けるためにできること
FD3Sを長く所有するために、特別なことばかりをする必要はありません。
まずは、基本を整えることから始めましょう。
① 愛車の状態を把握する
整備記録をまとめ、過去に交換した部品や修理内容を把握しておきます。
特に、次の項目は確認しておきたいポイントです。
- エンジンの状態と整備履歴
- 冷却系統の状態
- エンジンオイルなどの油脂類
- ホースやゴム部品の劣化
- ブレーキ・タイヤ・足回り
- エアコンや電装系の作動状況
- 車検や保安基準に関する確認事項
すべてを一度に交換するのではなく、現状を把握して優先順位をつけることが重要です。
② 維持費を記録する
毎月の燃料費だけでなく、税金、保険、車検、整備費用なども記録しましょう。
記録があれば、年間でどの程度の費用がかかっているのかが分かります。
また、修理費用に備えて、毎月少しずつ予算を確保する方法もあります。
例えば、毎月1万円を整備用に積み立てると、1年間で12万円になります。
この金額ですべての修理をまかなえるという意味ではありませんが、急な出費への備えにはなります。
③ 部品とショップの情報を集める
必要な部品がすぐに見つからないことも考え、信頼できる部品販売店や整備ショップの情報を整理しておきましょう。
ただし、将来の部品供給を確実に予測することはできません。
焦って不要な部品を大量に購入するより、車両の状態と必要性に合わせて判断するほうが合理的です。
④ 安全と法令を優先する
愛車を長く維持するためには、走れる状態を保つだけでなく、安全に走れる状態を保つことも必要です。
不具合が見つかった場合は、無理に走行を続けず、必要な整備を受けましょう。
また、車検や保安基準に関する制度は、現時点で適用される内容を確認してください。
将来への不安だけで判断するのではなく、今できる整備を一つずつ進めることが大切です。
6. FD3Sを所有するということ
FD3Sを所有することは、単にクルマを一台持つこととは少し違うのかもしれません。
燃料費が気になる日もあります。
修理費用を聞いて、頭を抱える日もあります。
部品が見つからず、すぐに乗れないこともあるかもしれません。
それでも、エンジンが目を覚まし、ロータリーの音が響いた瞬間に、やっぱりこのクルマが好きだと思える。
その感覚があるから、維持するための手間も含めて、所有する意味を感じられるのではないでしょうか。
もちろん、無理をしてまで乗り続ける必要はありません。
生活や家計を犠牲にせず、安全に楽しめる範囲で愛車と付き合うことも大切です。
手放すことが間違いなのではなく、乗り続けることだけが正解なのでもありません。
ただ、今もFD3Sを大切にしたいと思うなら、その気持ちを実際の整備や日々の管理につなげていきたい。
いつか乗れなくなる日を恐れるだけではなく、今日、乗れることを楽しむ。
それが、今の時代にロータリーを所有するということなのかもしれません。
7. まとめ|好きなクルマに乗れる時間を大切に
ガソリン車を取り巻く環境は変化しています。
日本では2035年までに乗用車の新車販売で電動車100%を目指す政策が掲げられていますが、それは現在所有しているFD3Sが2035年に一律で走行禁止になることを意味するものではありません。
一方で、維持費、部品供給、整備環境、車両の経年劣化など、長く所有するうえで考えなければならない課題はあります。
だからこそ、今できることがあります。
愛車の状態を把握すること。
整備記録を残すこと。
維持費に備えること。
信頼できるショップとつながること。
そして、無理のない範囲で走る時間を楽しむこと。
いつかは乗れなくなるかもしれない。
その不安は、簡単には消えないかもしれません。
それでも、今この瞬間にFD3Sを所有し、ロータリーの魅力を味わえることには意味があります。
時代が変わっても、自分が好きになったクルマの価値まで、簡単に変わるわけではありません。
いつまで乗れるかを心配するだけでなく、乗れる今を大切にする。
それが、KEN97 GARAGEとして伝えたい、FD3Sとの付き合い方です。
あなたは、あと何年FD3Sに乗り続けたいですか?
そして、これからも乗り続けるために、どんなことを大切にしていますか?
ぜひ、自分なりのロータリーとの付き合い方を考えてみてください。
KEN97 GARAGE
RX-7(FD3S)を中心に、クルマ・洗車・カーケアについて発信しています。
愛車と過ごす時間が、これからも長く続きますように。



