昔から聞く噂をロータリーエンジンの構造から検証してみた
RX-7乗りなら、一度くらい聞いたことがあるかもしれない。
「ロータリーってオイル燃やすんでしょ?」
さらに話が進むと、
「じゃあ2ストみたいなもんじゃん」
なんて話になる。
確かにRX-7のロータリーエンジンは、一般的な4ストローク・レシプロエンジンとは違い、意図的に燃焼室側へオイルを供給する仕組みを持っている。
では本当に、
RX-7=2スト
なのだろうか?
今回はイメージや都市伝説ではなく、エンジンの構造から機械的に検証してみる。
まず結論
結論から言うと、
「RX-7のロータリーは2ストではない。でも、オイルを燃焼室側へ供給するという意味では、2ストと似た部分がある」
これが一番正確。
つまり、
完全なデマではない。
しかし、
「オイルを燃やす=2スト」というだけで同じエンジンと考えるのも違う。
ここが今回のポイントだ。
なぜ「RX-7はオイルを燃やす」と言われるのか?
理由はロータリー独特の潤滑方式にある。
ロータリーエンジンでは、ローターの先端にあるアペックスシールがローターハウジング内面を滑りながら
動いている。
この部分を適切に潤滑しなければならない。
そこで使われるのが、
メタリングオイルポンプだ。
マツダのサービス資料では、ロータリーエンジンの特性に合わせてメタリングオイルポンプとオイルノズルを使用し、燃焼室の潤滑を行う仕組みが説明されている。
さらに、オイルの吐出量はエンジン回転数だけでなく、冷却水温や吸入空気量などの運転状態に応じて制御される。
つまり、
「オイルが燃焼室側に入る」こと自体は、ロータリーの設計思想の一部。
故障してオイルが漏れているから燃えている、という単純な話ではない。
ここが2ストと似ている
2ストロークエンジンでは、エンジンの形式や方式によって違いはあるものの、燃料・空気の流れにオイルを供給してエンジン内部を潤滑し、そのオイルの一部が燃焼する。
ロータリーにも、
潤滑のために燃焼室側へオイルを供給する
という考え方がある。
そのため、
「ロータリーって2ストっぽくない?」
という感覚が生まれるのは、それほど不思議ではない。
実際、ロータリーの技術資料でも、オイルを吸気系から取り込んで潤滑する方式について、2ストローク・ピストンエンジンとの類似性に触れている。
じゃあRX-7は本当に2ストなのか?
ここでストップ。
答えは「NO」。
ロータリーエンジンと2ストローク・レシプロエンジンでは、そもそもの燃焼・機械構造が違う。
2ストロークは、
ピストンが往復運動するレシプロエンジン。
一方ロータリーは、
ローターがハウジング内部を回転運動する。
つまり、
ピストンがない。
ここが決定的に違う。
ロータリーではローターの回転によって、
- 吸気
- 圧縮
- 燃焼・膨張
- 排気
という工程が進んでいく。
RX-7の「オイルを燃やす」は故障ではない
ここも重要。
一般的な4ストエンジンでは、
エンジンオイル=基本的には燃焼室に入れたくないもの
という考え方になる。
ところがロータリーでは事情が違う。
アペックスシールとハウジングの摺動部を適切に潤滑する必要があるため、メタリングオイルポンプによって必要量のオイルを供給する。
1994年型RX-7のサービス資料でも、ロータリー特有の燃焼室潤滑のためにメタリングオイルポンプを使用していることが確認できる。
だから、
「オイルが減る=即エンジン故障」
とは言えない。
むしろロータリーでは、オイル管理そのものが重要になる。
では「オイルを燃やす」と何が起こる?
燃焼室側へ供給されたオイルは、燃料とともに燃焼する。
当然、その結果として、
オイルは減っていく。
つまり、
オイル消費が発生する。
ロータリーエンジンでは、オイルを「消費すること」そのものが構造上想定されている。
そのためロータリーでは、
「オイルが減った」
ではなく、
「どれくらい減ったのか」
を管理することが重要になる。
そして重要なのがアペックスシール
ロータリーを語るなら、ここは外せない。
ローターの先端にある、
アペックスシール
がローターハウジング内面をシールしている。
このシールが適切に働かなければ、燃焼室の圧力を維持できない。
古いマツダのサービス資料でも、アペックスシールの摩耗、破損、スプリングなどについて
点検項目が設定されている。
つまり、
オイルは単なる「燃えてなくなる液体」ではない。
ロータリーのシールシステムを成立させるための重要な存在なのだ。
2ストとロータリーの共通点
ここで整理してみよう。
| 項目 | 2スト・レシプロ | RX-7ロータリー |
|---|---|---|
| ピストン | ある | ない |
| ローター | ない | ある |
| オイルを燃焼側へ供給 | 方式によってある | ある |
| オイル消費 | 発生する | 発生する |
| アペックスシール | ない | ある |
| ピストンリング | ある | ない |
| 回転運動 | クランクで変換 | ローター自体が回転 |
| 基本構造 | 往復運動 | 回転運動 |
こうやって並べると、
「オイルを燃やす」という部分は似ている。
しかし、
エンジンそのものは全く別物。
ということが分かる。
じゃあ「RX-7=4スト」なの?
これも少し面白い。
ロータリーはピストンエンジンのように、
「2スト」
「4スト」
と単純に分類するのが難しい。
ロータリーはローターの回転によって吸気・圧縮・燃焼・排気を行う、ヴァンケル型のロータリーエンジンだからだ。
だから、
「2ストなの?」
と聞かれたら、
「いや、ロータリーだよ」
が一番正しい。
ただし、
「2ストっぽいところはあるよね」
なら、
「それは確かにある」 となる。
なぜこんな都市伝説が生まれたのか?
個人的にここが一番面白い。
RX-7に乗っている人からすると、
「オイルが減る」
という現象を実際に経験する。
そして、
「燃焼室にオイルを入れている」
という事実がある。
さらに2ストも、
「オイルを燃やす」
という特徴がある。
すると、
オイルを燃やす
↓
2ストもオイルを燃やす
↓
ロータリーも2ストみたいなもの?
という連想が生まれる。
でも、
途中の共通点はあっても、エンジン構造まで同じではない。
これが今回の答えだ。
【検証結果】RX-7は2ストなのか?
❌ RX-7=2スト
これは違う。
⭕ RX-7ロータリーには2ストと似た潤滑思想がある
これは言える。
⭕ オイルを燃焼室側へ供給する
これはロータリーの潤滑システムとして実際に存在する。
⭕ オイル消費は構造上発生する
これもロータリーの特徴。
つまり、「2ストみたい」は半分正解、半分間違い。
これが一番しっくりくる。
そしてRX-7乗りにとって一番大事なこと
「オイルを燃やすから2ストみたい」
という雑談よりも重要なのは、
ロータリーはオイル管理が重要なエンジンだということ。
オイル量を確認する。
オイル漏れを確認する。
メタリングオイル系統を確認する。
エンジンの状態を確認する。
そして、異常なオイル消費がないかを見る。
これがRX-7と長く付き合うためには重要になる。
特にFD3Sの13B-REWは、単純に「オイルを燃やすエンジンだから」で片付けるのではなく、メタリングオイルポンプ、オイルノズル、アペックスシール、ハウジングなどを一つの潤滑システムとして考える必要がある。
KEN97 GARAGE的に言えば……
RX-7を知らない人からすると、
「オイル燃やすって、それ大丈夫なの?」
となる。
でもロータリー乗りからすると、
「いや、それがロータリーなんだよ。」
となる。
この微妙な違いが面白い。
そして、
「じゃあ2ストなの?」
と聞かれたら、
「2ストじゃない。でも、オイルを燃焼側へ供給するっていう意味では、ちょっと2ストっぽい。」
これならかなり正確。
