世界中で同じ夢を見る人々?「This Man(この男)」の正体を追う|夢の都市伝説
「夢の中に、知らない男が何度も現れる」
そんな話を聞いたことはないだろうか。
見覚えのない顔。
なぜか強烈に残る表情。
何も話さず、ただこちらを見ている人物。
そして、インターネット上には、そんな人物を「世界中の人が夢で見ている」という不思議な都市伝説が存在する。
その代表として知られているのが、「This Man(この男)」だ。
しかし、ここで最初に重要なことを確認しておきたい。
「世界中の人が同じ男性を夢で見た」という科学的事実が確認されているわけではない。
「This Man」は、インターネット上で広く知られるようになった都市伝説・ネット発の物語として扱うべきものだ。
では、なぜこの話は世界中に広がったのか。
本当に「同じ夢」を見ることはあるのか。
そして、夢の中に出てくる「知らない人」は、本当に知らない人なのだろうか。
今回は、確認できる情報・心理学的に考えられること・都市伝説としての物語を分けながら、この不思議な話を追ってみたい。
■ 「This Man(この男)」とは何者なのか?
「This Man」は、2000年代後半にインターネット上で広まった、いわゆる「夢の中の男」に関する都市伝説だ。
ネット上で広まった物語では、世界各地の人々が夢の中で同じような男性を見たとされている。
その男性を描いた似顔絵が公開され、そこからさらに「自分も夢で見たことがある」という話が広がっていった。
【確認できる範囲で重要なポイント】
- 「This Man」という名前と肖像はインターネット上で広く流通した
- 「世界各地の人が同じ男を夢で見た」という物語として知られている
- 科学的に「世界中の人が同一人物を夢で見た」と証明されたわけではない
- したがって、都市伝説としての話と科学的事実は分けて考える必要がある
ここを曖昧にしてしまうと、単なる「怖い話の紹介」になってしまう。
KEN97 GARAGEでは、「本当に確認できること」と「都市伝説として語られていること」を分けて考える。
■ なぜ「世界中で同じ夢を見た」という話が生まれたのか?
この都市伝説が面白いのは、「同じ夢を見る」という現象そのものが、完全に荒唐無稽とも言い切れないところにある。
もちろん、これは夢を共有しているという意味ではない。
人間の脳には共通する構造があり、人間が経験する感情にも共通点がある。
そのため、似たような夢を見る人が存在すること自体は不思議ではない。
● 追いかけられる夢
逃げても逃げても追いつかれる。
走っているのに前に進めない。
どこかへ逃げようとしているのに出口が見つからない。
こうした夢は、さまざまな人が経験する代表的な夢のパターンとして知られている。
不安や恐怖、ストレスといった感情は人間に共通するため、似た夢の内容が生まれても不思議ではない。
● 落ちる夢
高い場所から落ちる。
足元が突然なくなる。
階段を踏み外す。
こうした「落下」の夢も、多くの人が経験する夢として知られている。
● 知らない場所にいる夢
見たことのない街。
知らない建物。
初めて来たはずなのに、なぜか場所を知っている感覚。
夢では、現実ではあり得ない状況を自然に受け入れてしまうこともある。
こうした共通した夢のパターンを考えると、「似た夢を見る人がいる」こと自体は、必ずしも超常現象ではない。
■ 夢の中の「知らない人」は、本当に知らない人なのか?
ここから、さらに興味深い問題が出てくる。
夢に登場した知らない人物は、本当に自分が一度も見たことのない人物なのだろうか?
私たちは普段、非常に多くの人間の顔を見ている。
- 街ですれ違った人
- 電車の乗客
- コンビニや飲食店の店員
- テレビに映った人物
- ネットの記事や広告に出てきた人物
- 一瞬だけ見たSNSの写真
そのすべてを、私たちは意識的に覚えているわけではない。
そのため、夢の中で「知らない人」が出てきても、現実世界でその顔を見たことがないと断定するのは難しい。
夢の中では、記憶に残っているさまざまな情報が組み合わされ、現実には存在しない人物像として現れる可能性も考えられる。
つまり――。
「知らない人」ではなく、
「知っていることに気づいていない人」
なのかもしれない。
■ 夢の記憶は「録画データ」ではない
夢について考えるとき、忘れてはいけないのが記憶だ。
私たちは夢を、ビデオカメラのように完全な映像として保存しているわけではない。
目が覚めた直後には覚えていた内容も、時間が経つにつれて急速に薄れていくことがある。
さらに、夢の細部について誰かと話したり、後から情報を得たりすることで、記憶の内容が変化する可能性もある。
つまり、
「昨夜こんな夢を見た」
という記憶が、完全な記録データだとは限らない。
ここは「This Man」を考えるうえでも重要なポイントになる。
■ インターネットが「同じ夢」を作った可能性
ここからは、かなり現代的な問題になる。
もし、ある人が「夢の中に変な男が出てきた」と思っていたとする。
そして翌日、その夢についてインターネットで検索した。
すると、似たような夢を見たという人の投稿を見つけた。
さらに調べると、また別の体験談が見つかる。
すると、最初は曖昧だった夢の記憶に、インターネットで見た情報が重なっていく可能性がある。
その結果、
「自分も同じ人物を見た」
という認識が強くなることも考えられる。
これは「This Manが嘘だ」と証明する話ではない。
逆に、夢を共有している証拠でもない。
重要なのは、ネット上で情報が拡散することで、似た体験が集まり、ひとつの都市伝説として強化される可能性があるということだ。
■ 「集合的無意識」とThis Man
「同じ夢」という話になると、しばしば登場するのが、心理学者カール・グスタフ・ユングの「集合的無意識」という考え方だ。
ユングは、人間の心には個人の経験だけでは説明できない、より深い共通の心理的パターンがあると考えた。
その考え方では、象徴的なイメージや物語のパターンが、人類に共通して現れる可能性が論じられている。
例えば、
- 母親
- 子ども
- 老人
- 英雄
- 影
- 死
- 再生
といったモチーフだ。
ただし注意。
「集合的無意識が存在する」ことと、「世界中の人間が同じ夢を共有している」ことは別の話だ。
集合的無意識を根拠に「This Manは実在する」と結論づけることはできない。
ここから先は、科学的に確認された事実というより、心理学的な考え方を都市伝説に重ねた考察になる。
■ もし、本当に夢を共有していたら?
ここからは、完全に都市伝説として考えてみよう。
もし、人間の夢が完全に個人の脳内だけで作られているものではなかったら?
もし、眠っている間だけアクセスできる「共通の場所」が存在したら?
そこに世界中の人間の意識が一時的につながっているとしたら?
そして、その場所で誰かと出会っているのだとしたら?
あなたが「知らない人」だと思っていた人物。
実は、その人物も同じ夜に眠っていた誰かだった――。
もちろん、そんな証拠は確認されていない。
だが、都市伝説として考えるなら、ここからが一番怖い。
■ 「世界中で同じ夢を見る」は本当にあり得るのか?
ここでは一度、冷静に考えてみよう。
仮に100万人が、それぞれ別々の夢を見たとする。
夢の内容は完全にバラバラになるだろう。
しかし、その中には当然、似た夢を見る人も出てくる。
さらに、その中から「似た夢を見た人」だけがSNSや掲示板で発見される。
一致しなかった人たちの夢は、ほとんど話題にならない。
すると、
「世界中で同じ夢を見ている人がいる」
という現象が、実際以上に強く感じられる可能性がある。
ここでは、選択バイアスや確証バイアスといった認知上の仕組みを考えることができる。
これは「都市伝説が嘘」という意味ではない。
むしろ、都市伝説がなぜ人々にリアルに感じられるのかを説明するヒントになる。
■ では「This Man」は実在するのか?
ここで結論を整理しよう。
【確認できること】
- 「This Man」という「夢の中の男」の都市伝説がインターネット上で広まったこと
- その男性の似顔絵がネット上で広く共有されたこと
- 世界中の人が同じ人物を夢で見たという物語が存在すること
【確認できないこと】
- 世界中の人が実際に同一人物を夢で見たこと
- 夢を共有する「共通の世界」が存在すること
- This Manという人物が超常的な存在として実在すること
- 科学的に夢の共有が証明されていること
つまり、現時点では「This Manは実在する」とは言えない。
むしろ、「インターネット時代に生まれ、広がった非常に完成度の高い都市伝説」と考える方が妥当だ。
■ それでも「夢」はまだ謎が多い
ここで話を終わらせると、少し面白くない。
なぜなら、夢そのものには、まだ分からないことが残されているからだ。
私たちは毎晩のように眠る。
そして、夢を見る。
しかし、夢の内容をすべて覚えているわけではない。
なぜ夢を見るのか。
なぜ特定の人物が登場するのか。
なぜ現実ではあり得ないことを、夢の中では普通の出来事として受け入れるのか。
なぜ目覚めた瞬間に、夢の記憶が急速に薄れていくのか。
夢には、まだ研究すべき謎が残されている。
■ KEN97 GARAGE的に考える「This Man」の正体
科学的に考えれば、「世界中の人が同じ男を夢で見る」という証拠は確認できない。
似た夢が生まれる理由としては、
- 人間の脳に共通する仕組み
- 人間に共通する感情
- 記憶の再構成
- 日常生活で見た人物や情報
- インターネットによる情報共有
- 確証バイアスや選択バイアス
などを考えることができる。
これらを考えれば、「似た夢」が生まれること自体は、それほど不思議ではない。
しかし、都市伝説の面白さはそこから先にある。
「説明できること」と「まだ説明しきれないこと」の境界線。
そこに、人間は「もしかしたら……」という物語を作る。
そしてインターネットによって、その物語が世界中へ広がっていく。
それこそが「This Man」という都市伝説が長く残っている理由のひとつなのかもしれない。
■ あなたは「同じ夢」を見たことがありますか?
もし、あなたにもこんな経験があるなら――。
- 知らない人物が何度も夢に出てくる
- 同じ場所に何度も行く
- 夢の中で誰かと会話する
- 目覚めたあとも妙にリアルな感覚が残る
- 他人から「自分も同じ夢を見た」と言われた
それは脳の働きによるものかもしれない。
偶然かもしれない。
記憶が作り直された結果かもしれない。
インターネットで似た情報を見つけたことで、記憶が影響されたのかもしれない。
――でも。
もし、本当に違う場所で眠っている人間同士が、同じ夢を見ていたとしたら?
あなたなら、それを「偶然」だと思いますか?
■ 最後に
「This Man」は、現時点で科学的に実在が確認された人物ではない。
「世界中の人間が同じ夢を共有している」という証拠も確認できない。
だからこそ、この話は都市伝説として面白い。
事実として証明されていないからこそ、そこに「もしも」を想像する余地がある。
そして今夜、あなたが眠りについたとき。
夢の中に、見覚えのない人物が現れるかもしれない。
その人物は何も話さない。
ただ、こちらを見ている。
そして目が覚める。
スマートフォンを手に取る。
世界のどこかで、誰かが同じような夢について投稿している。
――もし、あなたが今夜見る夢を、世界のどこかにいる誰かも見ていたら?
あなたなら、それを「偶然」だと思いますか?
それとも――。
夢の世界は、私たちが思っているよりずっと広いのかもしれない。
※本記事では、「This Man」に関するインターネット上の都市伝説と、夢・記憶について一般に知られている考え方を分けて紹介しています。「世界中の人が同じ人物を夢で見た」「夢を共有している」といった現象が科学的に証明されているわけではありません。また、都市伝説として語られている内容を事実として断定するものではありません。



