「RX-7ってツインターボだから、ターボが2個とも同時に回ってるんでしょ?」
実は、これ。
ちょっと違います。
FD3Sに搭載された13B-REWは、一般的な「2つのターボを並列で使うツインターボ」ではなく、
シーケンシャル・ツインターボ
を採用しています。
つまり、
ターボが2個ある=最初から2個とも同じように働いている
ではありません。
むしろFD3Sの面白さは、
「1個目から2個目へ、ターボの仕事をバトンタッチしていく」
ところにあります。
そして、この切り替わりが話題になるのが、
約4,000〜4,500rpm付近。
今回は、FD3Sの「ツインターボ都市伝説」を分かりやすく解説します。
そもそもFD3Sは本当にツインターボなの?
これは本当です。
FD3Sの13B-REWは、マツダが採用したシーケンシャル・ツインターボを搭載しています。
マツダの公式ヒストリーでも、3代目RX-7には「13B 2ローター+シーケンシャル・ツインターボ」が搭載されたことが記録されています。
つまり、
「RX-7はツインターボ」
というのは都市伝説ではありません。
本当です。
ただし問題は、
「2個のターボをどう使っているのか?」
です。
「ツインターボ=2個同時」は間違い?
ここが今回のポイントです。
一般的なツインターボには、
2つのターボを並列で使う方式
があります。
イメージとしては、
排気
↓
┌────→ ターボ① ──┐
│ │
└────→ ターボ② ──┤
↓
エンジン
という感じ。
2つのターボが同時に仕事をするイメージです。
ところがFD3Sの13B-REWは違います。
FD3Sは、
シーケンシャル方式。
ざっくり言えば、
低回転
↓
ターボ①
↓
回転上昇
↓
ターボ②を準備
↓
約4,500rpm付近
↓
2つのターボを使う領域へ
↓
高回転
という仕組みです。
まずはプライマリーターボが仕事をする
低〜中回転域では、
プライマリー側のターボ
が中心になって過給します。
なぜ最初から2個使わないのでしょうか?
理由は簡単。
低回転で2個のターボを使おうとすると、レスポンスが悪くなりやすいからです。
ターボは排気ガスのエネルギーを利用して回転します。
エンジン回転数が低い状態では、当然ながら排気エネルギーも限られます。
そこで最初から2個のターボを動かそうとすると、
「1個あたりに十分なエネルギーを与えられない」
という問題が出てきます。
だからFD3Sでは、
まず1個目を使ってレスポンスを確保する。
これがシーケンシャルツインターボの基本的な考え方です。
そして約4,000rpm付近から「事件」が始まる
ここからがFD3Sらしいところ。
エンジン回転数が上昇すると、
セカンダリー側のターボを働かせる準備
が始まります。
ここを、
「4,000rpmになった瞬間、2個目のターボが全開!」
と考えると少し違います。
実際には、4,000rpm付近からセカンダリー側へ排気エネルギーを導き、ターボを立ち上げるための段階に入ります。
つまり、
4,000rpm=切替開始の目安
と考えたほうが分かりやすい。
そして、
約4,500rpm付近で切り替えが進みます。
この過程が、FD3Sの有名な「ターボの切り替わり」です。
じゃあ「4,500rpmでドッカン!」なの?
ここも少し違います。
FD3Sのシーケンシャルツインターボは、
「いきなり2個目がON!」
という単純なスイッチではありません。
ターボをスムーズにつなぐために、複数のバルブやアクチュエーター、ソレノイドなどを使って過給システムを制御しています。
つまり、
かなり複雑。
これが13B-REWの魅力でもあり、同時に弱点にもなります。
古いFD3Sでは、バキュームホースやソレノイド、バルブ類などの状態がターボシステムの動作に影響することがあります。
そのため、
「昔のFDだから、4,500rpmで必ず強烈な切り替わりがあるはず!」
と決めつけることもできません。
車両の年式、仕様、整備状態、ECUや吸排気系の変更などによってもフィーリングは変わります。
「2個とも回っている」のか?
ここが一番面白いところです。
実は、
「回っている」と「エンジンの過給に貢献している」は別の話
です。
ターボチャージャーは排気ガスによってタービンが回転します。
そのため、セカンダリー側が準備段階に入れば、
セカンダリーターボ自体を回転させることがあります。
しかし、
「ターボが回っている=そのターボの圧縮空気が全部エンジンに入っている」
とは限りません。
ここが初心者には非常に分かりにくいポイント。
なので、
「FDは低回転ではターボ1個しか回っていない」
と単純化するのも正確ではありません。
より正確に言うなら、
低回転ではプライマリーターボが主に過給を担当し、回転が上がるとセカンダリーターボを立ち上げ、約4,500rpm付近で2つを使う領域へ移行する。
という理解が近いです。
なぜこんな面倒な仕組みにしたの?
ここに13B-REWの面白さがあります。
もし、
大きなターボ1個だけ
を使ったらどうなるでしょう?
高回転では大きなパワーを狙いやすくなります。
しかし低回転では、
「ターボがなかなか立ち上がらない」
というターボラグが問題になります。
逆に小さなターボなら、
低回転ではレスポンスが良い。
でも高回転・高負荷では、
空気を送り込む能力が足りなくなる。
そこで、
低回転=小さいターボでレスポンス
↓
高回転=2個のターボで必要な空気量を確保
という考え方が登場します。
これが、
シーケンシャル・ツインターボ
です。
だからFDは「4,000〜4,500rpm付近」で性格が変わる
FD3Sに乗ったことがある人なら、
「4,000rpmを超えたあたりから雰囲気が変わる」
という話を聞いたことがあるかもしれません。
これは単なる都市伝説ではありません。
セカンダリーターボ側を立ち上げる過程が関係しています。
Motor-Fanの記事でも、純正シーケンシャルツインターボについて、セカンダリーが動き出す約4,500rpm付近で谷間が発生する特性が紹介されています。
つまり、
~3,000rpm
↓
プライマリー中心
3,000~4,000rpm
↓
過給が強くなる
約4,000rpm~
↓
セカンダリー側の準備
約4,500rpm付近
↓
シーケンシャル切替
その先
↓
ツインターボ領域
というイメージです。
「4,500rpmで急に速くなる」は都市伝説?
半分本当。半分誤解。
これが一番近い答えです。
4,500rpm付近には実際にシーケンシャルシステムの切り替えがあります。
ただし、
「4,500rpmになった瞬間、2個目のターボが突然爆発的にONになる」
という単純な仕組みではありません。
複数の制御によって、
プライマリー → セカンダリー
へと過給システムをつないでいきます。
だからFD3Sの4,000〜4,500rpm付近には、
「ターボが切り替わる瞬間」
というより、
「ターボシステムが次のステージへ移行する時間」
と考えたほうが面白い。
そして、このシステムがFDの弱点にもなる
ここまで聞くと、
「すごいシステムじゃん!」
と思いますよね。
実際、当時としてはかなり凝ったシステムです。
しかし、
複雑=トラブル要因も増える
という宿命があります。
FD3Sのシーケンシャルツインターボは、バキューム系、ソレノイド、アクチュエーター、各種バルブなど、多くの部品によって制御されています。
そのため、
- セカンダリーが正常に立ち上がらない
- 4,500rpm付近でブーストが落ちる
- 高回転でパワーが出ない
- ブーストが安定しない
などの症状につながる場合があります。
FD3Sでは実際に、チャージコントロール系のソレノイド不良などがセカンダリー側の過給に影響する事例も報告されています。
つまり「FDのツインターボ」は普通のツインターボではない
ここまでを超簡単にまとめると、
普通のイメージ
ツインターボ
↓
ターボ① + ターボ②
↓
同時に仕事
FD3S
シーケンシャル・ツインターボ
↓
低回転
↓
プライマリー中心
↓
回転上昇
↓
セカンダリーを準備
↓
約4,500rpm付近
↓
2つを使う領域へ
↓
高回転までパワーを伸ばす
という違いがあります。
結論:「2個あるのに、最初から2個で働いていない」
今回の都市伝説を一言で言うなら、
「FD3Sのツインターボは、ターボが2個ある。でも最初から2個が同じ仕事をしているわけではない。」
これです。
そしてさらに面白いのが、
「4,000rpm付近からセカンダリー側が動き始める」
というところ。
「4,500rpmでターボがON!」
ではなく、
「4,000rpmあたりから準備が始まり、約4,500rpm付近で切り替えが進む」
と考えると、FD3Sのシーケンシャルツインターボがかなり理解しやすくなります。
🚗 FD3Sの都市伝説は、まだまだある
RX-7には、他にも、
「え?それ本当なの?」
という話がたくさんあります。
例えば、
「RX-7はオイルを燃やすから2ストみたいなもの?」
ロータリーならではのオイル供給システムの話。
「FDの13Bって、本当に1.3Lなの?」
ロータリーの排気量表記と「2.6L相当」と言われる理由。
「RX-7はエンジンより先にターボが壊れる?」
13B-REWのターボ・バキューム系の話。
「FD3Sは本当に4,500rpmから別のエンジンになる?」
シーケンシャルツインターボの切り替えと実際のパワーフィール。
こういう話を調べていくと、
「都市伝説だと思っていた話が、実はかなり技術的な理由で生まれていた」
ということがあります。
それがRX-7の面白いところ。
🔧 KEN97 GARAGE的結論
FD3Sのツインターボは、
「2個のターボが最初から同時に頑張っている」
わけではありません。
低回転ではプライマリーを中心に使い、
約4,000rpm付近からセカンダリー側を立ち上げる準備。
そして、
約4,500rpm付近でシーケンシャル制御の切り替えが進み、2つのターボを使う領域へ。
だからこそFD3Sには、
「4,000〜4,500rpm付近でキャラクターが変わる」
という独特のフィーリングがあります。
そして25年以上経った現在では、
その複雑な仕組みそのものがFD3Sの魅力であり、同時にメンテナンスの重要ポイントでもある。
――これもまた、
RX-7というクルマの面白さなのかもしれません。



