「Bluetooth 5.3搭載!」
「最新Bluetooth 5.4対応!」
イヤホンやカーオーディオを探していると、こんな表記をよく見かけます。
でも、ここで疑問になるのが、
「5.4のほうが音が良いの?」
「5.3より5.4のほうが通信距離が長い?」
「車でBluetoothを使うなら、5.3と5.4のどっちを選べばいい?」
というところ。
結論から言うと、Bluetoothの数字だけでイヤホンやカーオーディオを選ぶのはおすすめできません。
Bluetooth 5.3と5.4は確かに世代が違います。
しかし、Bluetoothのバージョン番号は、単純に「音質が良くなる」「通信速度が速くなる」という
数字ではありません。
この記事では、Bluetooth SIG(Bluetooth Special Interest Group)の公式資料をもとに、
- Bluetooth 5.3と5.4の違い
- イヤホンでは何を見るべきか
- 車のBluetoothでは何を見るべきか
- LE AudioとLC3とは何なのか
- Bluetooth 5.4なら買いなのか
- 5.3でも十分なのか
を、できるだけ分かりやすく整理します。
Bluetooth 5.3と5.4の違いを先に結論
まず、一番知りたいところから。
Bluetooth 5.3と5.4は「5.4のほうが全部上」という関係ではありません。
Bluetooth 5.4は、2023年1月31日に公開されたBluetooth Core Specificationです。5.3は2021年の仕様です。
5.4では、Bluetooth LEを使う機器向けの機能が強化されています。
一方で、
Bluetooth 5.4だから音楽の音質が5.3より良くなる
という意味ではありません。
イヤホンなら、
Bluetoothバージョンより「対応コーデック」「LE Audio対応」「イヤホンそのものの音質」
を見ることが重要です。
車なら、
Bluetoothバージョンより「スマホとの接続安定性」「A2DP対応」「通話用HFP」「ナビ・オーディオとの相性」
のほうが重要です。
そもそもBluetooth 5.3・5.4って何?
Bluetoothには「Core Specification」という基本仕様があります。
Bluetooth 5.3、5.4という数字は、この基本仕様のバージョンです。
現在ではBluetooth Core Specification 6.0、6.1、6.2、6.3も採択されています。Bluetooth SIGの仕様一覧では、5.3・5.4だけでなく6.x世代も掲載されています。
ただし、ここで注意したいのが、
Bluetoothのバージョン番号=音質の世代
ではないこと。
Bluetoothは音楽だけの通信規格ではありません。
イヤホン、スマートウォッチ、スマートフォン、車載機器、キーボード、マウス、ビーコン、位置情報関連機器など、非常に多くの用途で使われています。
そのため、5.4で追加された機能が、
「イヤホンの音質向上」
に直接関係するとは限りません。
Bluetooth 5.3では何が変わった?
Bluetooth 5.3では、主にBluetooth LEの通信効率や接続制御などが改善されています。
Bluetooth SIGの資料では、5.3の機能として、
- LE Channel Classification
- LE Enhanced Connection Update
- Periodic Advertising関連の改善
などが挙げられています。
つまり、
「Bluetooth通信をより効率的に使うための改良」
と考えると分かりやすいでしょう。
イヤホンの商品説明で「Bluetooth 5.3」と書かれていても、
「5.2より音質が劇的に良くなる」
という意味ではありません。
Bluetooth 5.4では何が変わった?
Bluetooth 5.4は2023年1月31日に公開されました。
5.4ではBluetooth LEを使った機器の通信に関する機能がさらに強化されています。
特に、
Periodic Advertising with Responses(PAwR)
など、Bluetooth LEを利用する多数の機器との通信を想定した機能が追加されています。
これは、イヤホンで音楽を聴くためだけに作られた機能ではありません。
大量の電子棚札など、低消費電力で多数の機器を扱う用途などにも関係します。
つまり、
「Bluetooth 5.4=イヤホンが5.3より高音質」
という理解は間違いです。
じゃあBluetooth 5.3と5.4、イヤホンならどっち?
ここが一番重要です。
イヤホンの場合
Bluetooth 5.3と5.4だけを比較して購入する必要はありません。
むしろ確認したいのは、次の項目です。
イヤホン選びで見るべき順番
① 対応コーデック
↓
② LE Audio / LC3対応
↓
③ マルチポイント
↓
④ Bluetoothバージョン
↓
⑤ イヤホン本体の音質・装着感
……という考え方ができます。
もちろん最終的には用途によって優先順位は変わります。
コーデックって何?
Bluetoothで音楽を送るとき、音声データをそのまま送るわけではありません。
音声を圧縮して送ります。
この圧縮・復元の方式がコーデックです。
代表的なものとして、
- SBC
- AAC
- aptX
- aptX Adaptive
- LDAC
- LC3
などがあります。
ここはかなり重要。
例えば、
Bluetooth 5.4+SBC と、Bluetooth 5.3+LDAC
を比べた場合、
「5.4だから音が良い」
とは言えません。
Bluetooth SIGも、BluetoothのオーディオではClassic AudioとLE Audioという異なる仕組みが存在することを
説明しています。
LE Audioって何?
ここから少しややこしくなります。
Bluetoothには、
Bluetooth Classic と、Bluetooth LE
があります。
従来のBluetoothオーディオでは、Bluetooth Classicが主に使われてきました。
そして新しい世代のBluetoothオーディオとして登場したのが、
LE Audioです。
Bluetooth SIGによれば、LE AudioはBluetooth Low Energyの無線を使い、従来のClassic Audioとは異なる新しいオーディオアーキテクチャを採用しています。
LC3って何?
LE Audioとセットで覚えておきたいのが、
LC3です。
LC3は、
Low Complexity Communications Codec
というBluetooth LE Audio向けのコーデックです。
Bluetooth SIGによれば、LC3は低いデータレートでも高品質な音声を実現することを目的としたコーデックです。
Bluetooth SIGの説明では、LC3についてSBCと比較したリスニングテストで、同じビットレートなら音質向上、あるいはより低いビットレートでも同等以上の音質を実現できる結果が示されています。
つまり今後のBluetoothイヤホンを見るなら、
「5.4だから」ではなく「LE Audio / LC3に対応しているか」
を見る価値があります。
では、Bluetooth 5.3のイヤホンは古い?
全然そんなことはありません。
ここは誤解しやすいところです。
Bluetooth 5.3搭載でも、
- 音質が良い
- 接続が安定している
- 対応コーデックが充実
- ノイズキャンセリングが優秀
- マイク性能が良い
- バッテリーが長持ち
- マルチポイント対応
というイヤホンは普通にあります。
逆に、Bluetooth 5.4搭載
というだけで、それらが優れているとは限りません。
車のBluetoothなら話が少し変わる
ここはイヤホンより重要です。
車でBluetoothを使う場合、
「5.3か5.4か」より、車載機器がどのBluetoothプロファイルに対応しているか
を見るほうが重要です。
Bluetooth SIGによると、Classic AudioではA2DPが音楽ストリーミングに使われ、HFPなども通話用途で使われます。
つまり車なら、
音楽 A2DP
ハンズフリー通話 HFP
などが重要になります。
車でBluetooth 5.4にするメリットは?
ここは期待しすぎないほうがいいです。
例えば、
「Bluetooth 5.4のスマホだから、Bluetooth 5.3のカーオーディオより圧倒的に音が良くなる」
ということはありません。
車のBluetoothオーディオでは、
スマホ側と車載機器側が実際にどの音声方式・プロファイルを使うか
が重要だからです。
車ならBluetoothの数字より「対応方式」を見る
カーオーディオを選ぶ場合、次のような仕様を確認したほうがいいでしょう。
| チェック項目 | 重要度 |
|---|---|
| Bluetooth 5.3 / 5.4 | ★★★ |
| A2DP | ★★★★★ |
| HFP | ★★★★★ |
| 対応コーデック | ★★★★★ |
| 接続安定性 | ★★★★★ |
| マルチポイント | ★★★★ |
| LE Audio | ★★★ |
| LC3 | ★★★ |
| ノイズ・音質処理 | ★★★★★ |
※重要度は「一般的な車載Bluetooth利用」を前提とした実用上の目安です。
特に古い車はBluetoothバージョンだけ見ない
車の場合、むしろこっちが重要です。
例えば、
スマホ → Bluetooth → 車載機器 → 車のアンプ → スピーカー
という流れになります。
Bluetoothだけ最新にしても、
車側のアンプやスピーカー、DSPなどが古ければ、Bluetooth 5.4にしただけで音質が劇的に
変わるわけではありません。
逆に、
古いBluetooth機器でも車との相性が良く、安定して音楽を再生できる
なら、実用上は十分な場合があります。
Bluetooth 5.3と5.4、結局どっちを買えばいい?
ここまでをまとめます。
イヤホンなら
Bluetooth 5.3
普通に選択肢に入れてOK。
特に、
- 対応コーデックが充実
- LE Audio対応
- LC3対応
- マルチポイント対応
- 音質が好み
- ノイズキャンセリングが優秀
なら、5.3だから避ける必要はありません。
Bluetooth 5.4
もちろん選択肢になります。
ただし、
「5.4だから5.3より音が良い」
とは考えないこと。

車ならどうする?
車でBluetoothを使うなら、
Bluetooth 5.3か5.4かより、A2DP・HFP・対応コーデック・接続安定性を優先
するのがおすすめです。
特に後付けBluetoothレシーバーなどを購入する場合、
「Bluetooth 5.4搭載!」
という大きな文字だけで決めるのではなく、
対応コーデック
を確認しましょう。
じゃあBluetooth 6.0ならもっと良いの?
ここも勘違いしやすい。
Bluetooth 6.0では、
Channel Sounding
という機能が追加されています。
これはBluetooth機器同士の距離をより正確に測定するための技術です。デジタルキーや「探す」系の用途などが想定されています。
つまり、
Bluetooth 6.0=音質が5.4より良い
ではありません。
Bluetoothという規格全体が進化しているのであって、すべての用途が同じ方向に性能アップ
しているわけではないのです。
Bluetoothの数字に騙されないための簡単な見方
商品ページで、
Bluetooth 5.4搭載!
と書いてあったら、
そこで購入を決めるのではなく、
イヤホンなら
「コーデックは何?」
↓
「LE Audio / LC3は?」
↓
「マルチポイントは?」
↓
「音質・ノイキャン・装着感は?」
↓
「最後にBluetooth 5.3/5.4を確認」
という順番で見ればOKです。
車なら
「A2DP対応?」
↓
「HFP対応?」
↓
「コーデックは?」
↓
「接続は安定する?」
↓
「スマホとの相性は?」
↓
「Bluetooth 5.3/5.4?」
という順番がおすすめです。
まとめ|Bluetooth 5.3と5.4は「数字だけ」で選ばない
Bluetooth 5.3と5.4は確かに違う規格です。
5.4は2023年1月31日に公開され、Bluetooth LE関連の機能が拡張されています。
しかし、Bluetooth 5.4=音質が良い ではありません。
イヤホンなら、
Bluetoothバージョンより「コーデック」「LE Audio」「LC3」「イヤホン本体の性能」
を見る。
車なら、Bluetoothバージョンより「A2DP」「HFP」「コーデック」「接続安定性」
を見る。
これがポイントです。
そして現在はBluetooth Core Specificationも6.x世代まで進んでいます。
だからこそ、「Bluetoothの数字が大きい=全部すごい」
ではなく、「自分が使う機能に必要な規格に対応しているか」
を見るのが一番分かりやすい選び方です。
特に車好きなら、Bluetoothのバージョンだけでなく、スマホ→Bluetooth→カーオーディオ→アンプ→スピーカーまでの音の流れを考えて選ぶと、失敗しにくくなります。🚗🎵
参考・出典
- Bluetooth SIG「Bluetooth Core Specification」
5.4:2023年1月31日公開。 - Bluetooth SIG「Bluetooth Core 6.0 Feature Overview」
Channel Soundingなど6.0の主要機能を解説。 - Bluetooth SIG「LE Audio」
Classic Audio、LE Audio、LC3などを解説。 - Bluetooth SIG「Technical overview of LC3」
LC3の特徴・ビットレートなどを解説。2020年11月2日。
記事確認日:2026年9月27日
