「RX-7はプラグを外してセルを回すと、エンジンがかかりやすくなる」
ロータリー好きなら、一度くらい聞いたことがある話ではないでしょうか。
普通のレシプロエンジンしか知らない人からすると、
「いや、プラグを外したら火花が飛ばないんだから、余計にエンジンかからないんじゃないの?」
と思ってしまいます。
ところがRX-7の場合、この話にはちゃんとした理由があります。
ただし、正確には「プラグを外すと始動性が良くなる」というより、
「エンジンがかぶってしまったとき、プラグを外して燃料を抜くことで復旧しやすくする」
という話です。
実際、RX-7のフラッディング対策として、スパークプラグを取り外してクランキングする手順が古くから
紹介されています。
結論:普通の始動方法ではない。でも「かぶり対策」としては理屈がある
先に結論です。
RX-7でプラグを外すこと自体が始動性を高めるわけではありません。
むしろ、プラグを外した状態では当然、通常の点火による始動はできません。
では、なぜ「プラグを外すとエンジンがかかるようになる」と言われるのでしょうか。
答えはフラッディングです。
燃料が多すぎてプラグが濡れたり、燃焼室内に余分な燃料が残った状態になると、正常な点火ができなくなることがあります。
そこでプラグを外し、燃料を排出しながらエンジンをクランキングする。
つまり、
「プラグを外す=始動性アップ」ではなく、「プラグを外す=かぶったエンジンを復旧させるための作業」
と考えるのが正確です。
なぜRX-7は「かぶり」が話題になりやすいのか?
RX-7に乗っている人なら、「かぶった」という言葉を聞く機会は多いと思います。
特にロータリーでは、短時間だけエンジンを始動してすぐ停止するショートスタートが、フラッディングの原因の一つとして説明されています。
例えば、
- エンジンを始動する
- 数十秒だけ動かす
- 十分に暖まる前に停止する
- その後、再始動しようとする
このような状況です。
RX-7のフラッディング対策資料では、短時間の始動・停止を避け、エンジンを十分に作動温度まで温めてから停止することが推奨されています。
プラグを外すと何が起きる?
ここが今回のポイントです。
フラッディングしたエンジンでは、燃焼室内に余分な燃料が存在している可能性があります。
そこでスパークプラグを外します。
すると、セルモーターでエンジンを回したときに、プラグホールから燃料や燃料蒸気を排出できます。
実際のRX-7のフラッディング解除手順でも、プラグを取り外してクランキングし、燃料を排出する方法が紹介されています。
つまり、
燃料が多すぎる
↓
点火できない
↓
プラグを外す
↓
クランキングして余分な燃料を排出
↓
プラグを確認・清掃または交換
↓
再装着して始動
という流れです。
「プラグを外したら始動性が良くなった」の正体
ここで、昔からの噂を少し言い換えてみましょう。
「RX-7はプラグを外すと始動性が良くなる」
これは少し違います。
より正確に言うなら、
「RX-7がフラッディングして始動できないとき、プラグを外して燃料を排出すると、再始動できる状態に戻しやすい」
です。
実際、1986~1991年式RX-7向けのフラッディング解除手順では、4本のスパークプラグを取り外し、燃料系を停止させた状態で15~20秒程度クランキングする手順が紹介されています。
実はマツダ側にも「かぶり対策」の仕組みがある
さらに面白いのがここです。
1994年型RX-7のマツダ・ファクトリーサービスマニュアルには、フラッディングなどでスパークプラグが汚れた場合の始動を助けるデチョーク制御が記載されています。
スロットルを全開にしてクランキングすると、燃料噴射をカットして、余分な燃料を排出しながらプラグを乾かす仕組みです。
つまり、
「ロータリーはかぶったらプラグを外す」
という昔からの経験則には、少なくとも燃料過多を解消して再始動条件を整えるという機械的な裏付けがあります。
じゃあ、プラグを外してセルを回せばいいの?
ここは注意が必要です。
「始動しないRX-7なら、とりあえずプラグを全部外してセルを回せばOK」ではありません。
フラッディング解除手順は車種・年式によって異なります。
例えばFC系とFD系では、燃料系や制御方式が違います。
実際、RX-7専門の技術資料でも、1984~1985年、1979~1985年、1986~1991年などで手順が分けられています。
そのため、自分のRX-7の年式・型式に合った整備手順を確認することが重要です。
特に注意したいのが「燃料」と「バッテリー」
フラッディング解除では、何度もセルを回すことになります。
そのため、バッテリーの状態はかなり重要です。
実際のフラッディング解除手順でも、エンジンのクランキング速度が遅い場合は、バッテリーを充電するよう説明されています。
また、プラグホールから燃料が出る可能性があるため、火気厳禁です。
燃料が噴き出す可能性がある状態で、タバコや火花を近づけるのは絶対に避けるべきです。
フラッディングするとプラグ交換が必要になることも
燃料で濡れたスパークプラグは、正常な火花を飛ばせなくなる場合があります。
そのため、フラッディングがひどい場合にはプラグを清掃・乾燥させたり、新品のプラグへ交換したりする手順も紹介されています。
つまり、
「燃料を抜けば終わり」
ではありません。
プラグ自体の状態も確認する必要があります。
さらに怖いのがエンジンオイルへの燃料混入
フラッディングがひどい場合、燃料がエンジンオイル側へ回り、オイルが燃料で希釈される可能性があります。
RX-7のフラッディング解除資料でも、フラッディング後はオイル交換を推奨する記載があります。
だからこそ、
「エンジンかかった!終わり!」
ではなく、状態によってはオイルの確認まで必要になります。
では「プラグを外すと始動性が良くなる」は本当なのか?
機械的に整理すると、こうなります。
| 話 | 判定 |
|---|---|
| プラグを外すと普通より始動性が上がる | ✕ 正確ではない |
| プラグを外してセルを回すと燃料を排出できる | ○ フラッディング解除手順として存在 |
| RX-7はフラッディング対策が重要 | ○ 整備資料でも確認できる |
| プラグが濡れると始動できなくなることがある | ○ |
| フラッディング後はプラグ交換が必要になる場合がある | ○ |
昔のRX-7乗りがやっていたことには理由があった
昔のRX-7乗りからすると、
「かかった?」
「いや、またかぶった」
「じゃあプラグ外そう」
という会話が普通にあったのかもしれません。
現代の感覚だと少し特殊に感じます。
でも、実際にはロータリーのフラッディングという問題に対して、
「燃料を抜く」
「プラグを乾かす」
「再始動できる条件を作る」
という非常にシンプルな機械的アプローチだったわけです。
まとめ:RX-7の「プラグを外す」は都市伝説ではなかった
今回の話をまとめます。
「RX-7はプラグを外すと始動性が良くなる」
これは、そのまま受け取ると少し違います。
しかし、
「RX-7がフラッディングしたとき、プラグを外してクランキングし、余分な燃料を排出することで再始動しやすくする」
という意味なら、実際のフラッディング解除手順として確認できます。
さらにマツダのサービスマニュアルにも、フラッディング時に燃料噴射をカットして余分な燃料を排出するデチョーク制御が記載されています。
つまり今回の都市伝説は、
「完全な迷信」ではなく、ロータリー特有のフラッディング対策が元になった話
と考えるのが妥当です。
RX-7って、こういう「昔から言われているけど、本当にそうなの?」という話を調べると、意外とちゃんと機械的な理由が出てくるんですよね。
次にRX-7で気になるのは、「暖機しないと本当に壊れる?」。
これも「昔から聞く話 → 本当にそうなのか → ロータリーの構造から検証」という同じシリーズで調べてみると、かなり面白いテーマになります。
参考資料
- Rotary Performance「RX-7 Unflooding Procedure」
- Rotary Performance「79-85 12A Carbureted Unflood Procedures」
- Rotary Performance「86-91 Turbo and Non-Turbo Unflooding Procedure」
- Mazda「1994 RX-7 Factory Service Manual / Fuel and Emission Control Systems」
※この記事では、RX-7のフラッディング解除に関する公開整備資料をもとに一般的な仕組みを解説しています。実際の整備作業は、車両の年式・型式・仕様によって手順が異なるため、メーカー整備書や専門業者の指示を確認してください。
